この記事では、合資会社という会社形態について解説します。合資会社は現在新規設立が可能とされている会社形態の1つですが、あまり数がありません。
合資会社の形態を取っている会社数は非常に少ないというのが現状です。
しかし現在主流となっている株式会社や合名会社とは異なる特徴を多く持っているため、合資会社についても知っておいたほうが良いでしょう。
それぞれの会社形態における特徴を知ることで、ご自身の目的や理想に合った会社を設立できるのです。
そこでこちらの記事において、合資会社の特徴やメリット・デメリットを解説します。
会社設立を検討している人・合資会社という会社形態について詳しく知りたい人はぜひお読みください。
合資会社とは
合資会社とは有限責任の社員と無限責任の社員の両方で構成されている会社をいいます。略して表記するときには(資)または(シ)と表します。
有限責任とは会社の債権者に対して有する責任の上限が出資額である、すなわち責任が有限であることです。
対する無限責任は責任の上限がなく、もし会社が倒産した場合にはご自身の個人的な財産を手放してでも負債を支払う必要があります。
合資会社は有限責任社員と無限責任社員の両者が必要ということで、最低でも2名以上によって構成されます。
合資会社のメリット
合資会社のメリットを紹介します。主な設立形態である株式会社との比較を中心に取り上げました。
①設立費用が比較的安い
合資会社は設立費用が比較的安めです。株式会社の設立費用と比較するとその差がより明らかになります。
株式会社 | 合資会社 | |
定款関連の費用 | 定款認証 50,000円 印紙代 40,000円※電子認証であれば不要 謄本代 約2,000円 | 定款認証代 0円 印紙代 40,000円※電子認証であれば不要 |
登記にかかる登録免許税 | 最低150,000円 資本金の0.7%が150,000円を上回る場合には、その金額 | 資本金の金額にかかわらず60,000円 |
合計 | 約242,000円 定款を電子認証にした場合は202,000円 | 100,000円 定款を電子認証にした場合は60,000円 |
このほかにも会社実印の製作費や専門家への設立代行依頼費用などがかかりますが、株式会社と合資会社で大きく異なる点は上記のとおりです。
このように会社設立費用がかなり安い点が大きなメリットですが、こちらは合名会社、そして株式会社の次に選ばれやすい会社形態である合同会社にも当てはまります。
②資本金が不要
合資会社の設立には資本金が不要です。株式会社や合同会社は最低1円以上の金銭または財産の出資が必要ですが、合資会社の場合には信用や労務など物理的ではないものでも出資ができます。
株式会社は資本金で信用力や会社規模が見られるため資本金が非常に重要視されますが、合資会社の場合は資本金に頭を悩ませる必要がありません。
もちろん会社の設立や運営には金銭が必要ですが、必ずしも資本金という形で振り込まなければいけない金銭はないため、自由度が高いです。
③法律上の決まりが少なく自由度が高い・決算公告の義務がない
会社設立の際に必要とされる定款作成ですが、合資会社は規制がかなり少ないです。
株式会社は法律上の決まりが多くさまざまな面に考慮しなければなりませんが、合資会社は自由に規定できます。
会社法に違反しない範囲であれば好きなように定款を作成できるため、ご自身の理想を存分に反映した会社運営が可能です。
決算公告の義務もないため、手間が少ない点もメリットでしょう。
④合同会社と比べたときの大きなメリットはない
会社設立費用や会社運営の自由度などさまざまなメリットがあるように見えますが、これらは株式会社の設立と比較した場合のメリットです。
株式会社の次に選ばれる会社形態である合同会社と比較した場合は、特別なメリットがありません。
合同会社の設立費用も合資会社とほとんど変わりがないうえ、法律の規制が少なく自由度が高い点も共通しています。決算公告の義務がない点も同様です。
合同会社の場合は金銭による出資が必要ではあるものの、1円から設立可能なためデメリットといえるほどの影響はないでしょう。
このように合同会社と比較したときのメリットがほとんどないため、わざわざ合資会社を選ぶ理由はないというのが現状です。
合資会社のデメリット
合資会社はさまざまなデメリットがあるため、設立を検討するのであれば注意するべきでしょう。合資会社の持つデメリットを紹介します。
①一人での会社設立ができない
合資会社には、有限責任社員と無限責任社員の両方が必要です。そのため他の会社形態のように一人で会社設立をすることができません。
一緒に会社設立や運営を進められる人を探す必要があります。
代表者が最低でも2名になるため、事業計画や方向性の決定などで都度話し合いが必要です。考え方に相違がある人同士であれば、トラブルや衝突が起こる可能性が高いでしょう。
会社設立や運営を進めるまでの過程において、人的な面で不自由を感じる場面が少なくありません。
②社会的認知度が低く信頼・信用が得にくい
合資会社という会社形態の社会的認知度は低いです。合資会社の特徴を知らない人はもちろんのこと、そもそも合資会社という形態を知らない人も少なくありません。
そのため真っ当な会社運営をしている場合であっても、知名度の低さから信頼・信用を得られない可能性があります。
また先述したとおり、合資会社は決算公告の義務がない点や規制が少ない点からも信頼・信用が低くなってしまいます。
多くの制限を守っている株式会社にはその分高い社会的地位が与えられます。
③無限責任社員は出資の範囲を超えて責任を負う必要がある
先述したとおり、無限責任とは責任の上限がない状態です。
そのため万が一会社が倒産した場合には、ご自身の個人的な財産を使ってでも債権者に返済しなければなりません。
また合資会社の大きな特徴として、有限責任社員と無限責任社員が混在していることが挙げられます。
そのため同じ社内であっても責任の範囲に大きな違いがあることから、トラブルになる可能性が高いです。
合同会社と同じ点が多いにも関わらず合資会社を選ぶ経営者が少ないのは、責任範囲の広さが大きな理由のひとつとなっています。
④相続税が高額になる可能性がある
合資会社の無限責任社員が死亡した場合、相続人は社員の地位を直接に受け継ぐことはできません。そのため出資の払い戻しがおこなわれますが、払い戻しの金額は利益配当とみなされます。
利益配当には所得税が課税されたあとに、相続税の課税もされます。そのため不動産などの含み資産を持っており相続金額が大きいと、多額の相続税が発生する可能性が高いです。
相続税の節税は非常に難しく、正しいタイミングで適切な対処をとらないと避けることが難しいです。
まとめ
合資会社は会社設立に必要な社員の最低人数や無限責任社員の必要性などの点から、選ばれることがほとんどない会社形態です。
設立費用の安さや自由度の高さなどメリットも多いですが、これらは合同会社にも当てはまります。
合同会社と比べたときに、合資会社にはほかに特別なメリットがないため、責任の範囲が有限である合同会社を選ぶ人が多いです。
合同会社を選ぶ人が多くなることでさらに社会的知名度や地位が下がり、ますます選ばれにくくなっていきます。
なお、木村光太朗司法書士事務所では、株式会社や合同会社以外の会社設立についても対応しております。
もし合資会社について気になる点がある・会社形態に悩んでいる人がいれば、ぜひお気軽にご相談ください。