日々生活を送る中でさまざまな団体名を目にします。そして多くの団体名には前か後ろに「法人格」と呼ばれる、以下のようなものがついています。
- 株式会社
- 有限会社
- 合同会社
- 合名会社
- 合資会社
- 一般社団法人
- 一般財団法人 など
このうち上の3つについては見聞きしたことのある人が多いでしょう。一般的に会社と呼ばれる団体は、株式会社・有限会社・合同会社のいずれかの形態を取っていることが多いです。
しかし有限会社については、現在新たに設立することはできません。現在有限会社として運営している・あるいは名が残っている会社は、以前に設立されたものがそのまま残っている状態の会社です。
この記事では有限会社の概要、有限会社はなぜ設立できなくなったのか、そして現在新規設立が可能とされている4種類の会社形態はどのようなものがあるのか、を解説します。
有限会社とは
まずは、有限会社の特徴や現在の立ち位置などを紹介します。有限会社の主な特徴は以下のとおりです。
- 資本金額が300万円以上である必要がある
- 社員数は50人以下の制限がある
- 決算の公告義務がなく、株主総会のような報告の場はない
- 取締役1名の役員が必要で、任期の定めはない
現在は有限会社を新たに設立することができず、株式会社の一種としての扱いを受けています。今でも有限会社と名乗っている会社は新規設立が出来なくなるよりも前に設立され、株式会社への変更手続きをせずに特例有限会社として存続することを選んだ会社です。
現在は有限会社にも社員数の制限がなくなり、50人を超えて人員を増やすことができます。しかし決算の公告義務がない点や役員に任期がない点などは変わっていません。
なぜ有限会社は設立できなくなったのか
なぜ現在は有限会社が設立できないのか、それには2006年5月の会社法改正が大きく関係します。
そもそも2006年の会社法改正以前は、株式会社の設立要件も現在と大きく違っていました。先ほど紹介した有限会社設立要件と違う点を紹介します。
- 資本金額が1,000万円以上である必要がある…★
- 社員数の制限はない
- 株主総会による決算の公告義務がある
- 取締役3名以上・監査役1名以上の役員が必要で、取締役の任期は原則2年…★
(★マークがついているものは現在と大きく違う点です。詳しくは後述します。)
株式会社は社員数の制限がなく有限会社よりも事業拡大がしやすかったため、大きな事業を始めようとする人や大規模な事業計画がある人、会社設立に関して高い水準で準備が整っている人に向いていました。
しかし紹介したとおり当時の株式会社は資本金や役員数などの要件が厳しく、今ほど容易に設立できるものではありませんでした。そのうえ決算の公告義務があることから、手間がかかるという認識を持たれていた会社形態です。
一方で有限会社は資本金や役員数など、株式会社ほど厳しい要件ではありませんでした。決算の公告義務もなかったため、比較的手軽に小規模な事業展開を検討する人に適していました。しかし社員数の制限があるため、ある程度まで成長したらそこからの事業拡大は難しいという課題がありました。
このような状況を大きく変えたのが、会社法改正です。株式会社の設立要件が以下のように変わりました。
- 最低資本金の定めがなくなり、理論上1円からでも会社設立が可能
- 必要な役員の数は取締役1名でも可、任期は原則10年まで伸ばせるように
株式会社設立の壁であった資本金と役員数に関する制限がなくなったため、小規模の株式会社も設立できるようになったのです。しかし社員数が無制限である点はそのままであるため、設立時は小規模であってもその後の事業拡大を容易に行うことができます。
このように株式会社設立の要件が非常に緩くなったことから、有限会社という形態が不要になりました。よって会社法改正に伴って株式会社と有限会社は統合されたのです。有限会社の新規設立は何らかの問題があって禁止にされたというわけではなく、有限会社という形態が必要ではなくなったため廃止されたということです。
新会社法の施行にあたって株式会社へ変更手続きを行った有限会社もありますが、特例有限会社として存続している有限会社もあります。現在も存続している有限会社は法律上株式会社の一種として扱われていますが、決算の公告義務がない点や役員に任期がない点などを引き継いでいます。
現在の4種類の会社形態とは?
現在新たに会社設立をするのであれば、最初に紹介した法人格のうち「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」のいずれかを選ぶことになります。以下の表はそれぞれの会社形態における特徴を比較したものです。
株式会社 | 合同会社 | 合名会社 | 合資会社 | |
出資者の最低人数 | 1名 | 1名 | 2名 | 2名 |
社員の責任範囲 | 有限 | 有限 | 無限 | 無限・有限両方 |
利益の配分方法 | 所有する株式の割合で配分 | 自由 | 自由 | 自由 |
役員任期 | 最大10年 | 任期なし | 任期なし | 任期なし |
上場の可否 | 可能 | 不可能 | 不可能 | 不可能 |
設立費用 | 定款関連9万円(電子認証なら5万円) 登録免許税最低15万円 その他謄本代等 | 定款関連4万円(電子認証なら不要) 登録免許税最低6万円 その他謄本代等 | 定款関連4万円(電子認証なら不要) 登録免許税最低6万円 その他謄本代等 | 定款関連4万円(電子認証なら不要) 登録免許税最低6万円 その他謄本代等 |
経営の自由度 | 低い(法律や規制が多い) | 高い | 高い | 高い |
社会的な信用度 | 高い | 普通 | 低い | 低い |
決算の公告義務 | 有 | 無 | 無 | 無 |
株式会社と合同会社は1名での設立が可能な一方、合名会社と合資会社は最低2名が必要です。
会社が倒産してしまった際に債権者に対して社員の負う責任の範囲は、株式会社と合同会社は有限となっています。しかし合名会社は無限責任なため、会社が払いきれない負債を社員が支払う必要があります。合資会社には有限責任の社員と無限責任の社員の両方が所属します。
利益の配分は株式会社であれば所有する株式の割合に準じますが、その他の会社形態の場合は自由です。
株式会社の役員任期は最長10年で、同じ人が再任する場合も登記のし直しが必要です。その他の会社形態であれば任期の定めはありません。
上場ができるのは株式を発行している株式会社のみです。その他の会社形態は株式という概念がないため、必然的に上場もできません。
設立費用は株式会社がもっとも高額です。法律や規則における制限も株式会社が一番多いため経営の自由度が低く、設立や運営のハードルが一番高いのは株式会社でしょう。
しかしその分、社会的な信用度は株式会社がもっとも強いです。株式会社の次に選ぶ人や知名度の高い合同会社もそれなりの信用度を得ており、合名会社と合資会社は社会的信用度の面では弱めといえます。
株式会社と合同会社の違いについては、以下の記事を参考にしてみてくださいね。
>>株式会社と合同会社の違いとは?メリット・デメリットを比較してみた!
まとめ
有限会社は2006年5月の会社法改正において存続させる必要性がなくなったため、株式会社と統合するという形で廃止されました。
現在も有限会社として運営している会社は、法改正よりも前に設立されたものです。
会社設立をするのであれば株式会社・合同会社・合名会社・合資会社のいずれかから選ぶ必要がありますが、ほとんどの場合は株式会社か合同会社として設立されます。
新たに会社設立をする際には、それぞれの会社形態について特徴やメリット・デメリットを把握したうえで検討をしましょう。
もし会社設立で疑問や不安などがあれば、いつでも木村光太朗司法書士事務所へご相談ください。