この記事では、合名会社という会社形態について解説します。
合名会社は新規設立が可能とされている会社形態4種類のうちの1つですが、設立数はあまり多くありません。
合名会社という形態を選ぶ会社は非常に少ないというのが現状です。
しかし株式会社や合”同”会社などの主流な会社形態とは異なるポイントが多くあるため、合名会社についても知っておいたほうが良いでしょう。
設立可能なそれぞれの会社形態に関する特徴を知ることが、ご自身の目的や理想に合った会社設立のためには欠かせません。
そこでこちらの記事では、合”名”会社の特徴やメリット・デメリットを解説します。
会社設立を検討している人や、合名会社という会社形態について詳しく知りたい人はぜひお読みください。
合名会社とは
合名会社とは無限責任社員のみで構成されている会社です。略して表記する際には(名)が使用されます。
無限責任社員とは、会社が倒産してしまったときに債権者に対して負う責任に制限がない社員のことです。
すなわち会社が所有する資産が足りなければ、会社の負債を返済するために個人的な金銭や財産を手放す必要があります。
無限責任社員のみで構成されているのは、合名会社のみです。
合名会社のメリット
合名会社という会社形態を選ぶメリットを紹介します。主に選ばれる会社形態である株式会社と比べると、以下のようなメリットがあります。
①株式会社と比べて設立費用が安い
合名会社は設立費用が安く、株式会社と比べると違いがかなり大きいです。
株式会社と合名会社の設立費用において大きく異なるポイントを表にまとめました。
株式会社 | 合名会社 | |
定款関連の費用 | 定款認証 50,000円 印紙代 40,000円※電子認証であれば不要 謄本代 約2,000円 | 定款認証代 0円 印紙代 40,000円※電子認証であれば不要 |
登記にかかる登録免許税 | 最低150,000円 資本金の0.7%が150,000円を上回る場合には、その金額 | 資本金の金額にかかわらず60,000円 |
合計 | 約242,000円 定款を電子認証にした場合は202,000円 | 100,000円 定款を電子認証にした場合は60,000円 |
このように、合名会社は株式会社の半分以下の金額で設立ができます。
②金銭による出資が不要
合名会社は金銭による出資をしなくても会社設立が可能です。株式会社や合同会社は、最低1円以上の金銭または財産を資本金として出資する必要があります。しかし合名会社設立の場合には、信用や労務といった金銭や物理的財産以外のものを出資できます。
株式会社は資本金によって信用力や会社規模が測られるため資本金決定にはさまざまな面を考慮しなければなりませんが、合名会社であれば資本金を重視することなく会社設立を進めることができます。
もちろん先述したような会社設立費用や会社運営には金銭を用いますが、資本金という形で振り込まなければいけない金銭はありません。出資に関する自由度がかなり高い点はメリットといえるでしょう。
③定款作成や会社運営の自由度が高い・決算公告が不要
会社設立の際には定款の作成が必要ですが、合名会社の定款には法律による規制がかなり少ないです。
株式会社は法律上の決まりが多くさまざまな規制がありますが、合名会社はその心配が小さくて済みます。
会社法に違反しない範囲で好きなように定款作成・会社運営ができるため、自分の理想を反映させることができます。
決算公告の義務がない点もメリットのひとつです。手間が小さいため会社運営や事業展開に集中できます。
④これらのメリットはあくまで株式会社と比較した場合のもの
合名会社には会社設立費用や会社運営の自由度などさまざまなメリットがあります。しかし、これらのメリットは株式会社の設立と比較した場合のものです。
株式会社の次に選ばれる会社形態は合同会社ですが、合同会社の設立と比較したときの大きなメリットは特にありません。
合同会社の設立費用も合名会社とほとんど変わりません。定款や運営に関する法律による規制が少なく会社設立などに関する自由度が高い・決算公告の義務がない点も同様です。
合同会社は金銭による資本金の出資が必要ではありますが、最低で1円という金額設定なため出資に関する違いはそれほど影響ないでしょう。
このように合同会社と比較した場合にはわざわざ合名会社を選ぶメリットがほとんどないため、選ばれることがほとんどないのが現状です。
合名会社のデメリット
合名会社のデメリットを紹介します。メリットだけではなくデメリットもしっかり把握しないと、会社設立や運営において大きなトラブルに発展してしまいます。
①社会的認知度が低いため信頼や信用が得にくい
合名会社は社会的認知度が低い会社形態です。合名会社がどのような特徴を持つ会社形態であるのかだけでなく、そもそも合名会社という存在自体を知らない人も少なくありません。
そのため会社運営や展開する事業の正当性に関わらず、知名度の低さが原因で信頼や信用を得ることが難しくなってしまいます。
また先述したとおり、合名会社は決算公告の義務がなく法律による規制も少ないです。
多くの制限を守っている株式会社にはその分高い社会的地位が与えられる一方、そうでない合名会社は自然と地位が低くなってしまいます。
②会社が倒産した場合に追わなければならない責任が大きすぎる
先述したとおり、合名会社の社員は責任の上限がない無限責任社員です。
そのため万が一会社の倒産や訴訟による多額の出金が発生した場合には、ご自身の個人的な財産にまで影響が及ぶ可能性が高くあります。
合同会社と同じ点が多いにも関わらず合資会社を選ぶ経営者が少ないのは、責任範囲の広さが大きな理由のひとつとなっています。
合同会社・合資会社の違いは?
合同会社・合資会社と比較したときの大きな違いは、社員の持つ責任の範囲です。
先述したとおり合名会社の社員は無限責任社員であり、会社が倒産してしまった場合には個人の財産を手放してでも負債の返済をしなければなりません。
合同会社は全員が有限責任社員、合資会社は有限責任社員と無限責任社員の両方で構成されています。
このように会社を構成する社員の持つ責任の範囲が、合同会社・合資会社におけるもっとも明確な違いでしょう。
先述した合名会社のメリットである設立費用の安さや法規制の少なさによる自由度の高さは、合同会社や合資会社も持ち合わせているメリットです。
そのため特別な理由がない限り、責任の範囲が個人的な部分に及ばない合同会社の形態が選ばれます。
合名会社という会社形態をとるべき特別な理由は特にないというのが現状です。
まとめ
合名会社は設立費用の安さや法規制の少なさによる自由度の高さなどのメリットを持ちます。
しかしこれらは有限責任社員によって構成される合同会社にも当てはまるため、合名会社を選ぶ特別な理由はありません。現代においては特に必要性が高いわけではない会社形態です。
もし会社設立を検討しているのであれば、それぞれの会社形態の特徴やメリット・デメリットをしっかり把握したうえで選ぶ必要があります。
木村光太朗司法書士事務所では、今回紹介した合名会社など、株式会社や合同会社以外の会社形態に関する設立についても対応しております。
もし合名会社に関して疑問点がある・会社設立を検討しているものの形態に悩んでいる人がいれば、ぜひお気軽にご相談ください。